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広島に残る、数少ない醤油専業メーカー「濱口醤油」を訪ねて

濱口醤油
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江田島市大柿町柿浦に店と工場を構える濱口醤油は、天保年間創業の老舗醤油蔵。瀬戸内の温暖な風土に育まれたこの地で、代々受け継がれてきた醤油造りを守りながら、「あまり加工しすぎず、醤油本来の味を大切にする」という姿勢を貫いています。看板商品の「玉萬寿醤油」をはじめ、刺身用の甘露醤油や、家庭で親しまれる万能調味料「これ一本」シリーズなど、伝統と日々の使いやすさを両立した味わいは、江田島の食文化を語るうえで欠かせない存在です。

目次

広島に残る、数少ない醤油専業メーカー

広島県江田島市。穏やかな瀬戸内海に囲まれたこの島に、地域の食卓を支え続ける醤油蔵があります。濱口醤油は、組合として約50年の歴史を持つ老舗です。広島エリアで醤油を手がける事業者は約5軒、そのうち醤油だけを専業とするのはわずか5〜6社。10社にも満たない希少な存在として、地域の味を守り続けています。

濱口醤油

今回の取材では、製造現場の裏側から商品開発の工夫、消費トレンドへの対応まで、幅広くお話を伺いました。小さな蔵だからこそできる柔軟なものづくり、濱口社長のアイデアがすぐに商品化されるから、他の蔵にはないユニークな商品があります。

6代目社長の濱口督(ただし)さん。

柑橘×出汁──独自の商品開発

濱口醤油の特徴は、なんといってもその品種の多さです。約20種類の半製品・原料をベースに、調合工程を経て約40種類もの醤油を作り分けています。1回のバッチで受け入れる半製品は4種類。設備を4つに仕切り、限られたスペースの中で効率よく複数の製品を同時に仕込める体制を構築しています。このような製造現場の仕組み作りも濱口社長ならでは、だと思いました。本当にアイデアマンなのです!

濱口醤油

今回は、特に出汁・醤油に共通する「旨味」と柑橘を組み合わせた商品に注目してみました。

こだわりの柑橘系ドレッシング

柚子やカボスの顆粒をベースにしたドレッシングは、化学調味料は使わず、鰹といりこを丁寧に炒った粉末を用い、とろみはコーンスターチで付けています。素材の風味をストレートに感じられる、シンプルで力強い一品です。

いりこポン酢とカツオポン酢

そういえば、よく見る「ぽん酢」はほとんどが鰹だし・・・ではないでしょうか?(私調べ💦)味噌汁の出汁は絶対いりこ、というご家庭には、この「いりこぽん酢」をおすすめします。生のいりこは生臭みが出てしまうため、炒ったいりこを使うという工夫がされています。一方、カツオポン酢には鰹の厚削りを4g使用し、柑橘にはゆずと橙をブレンド。もともとは大きなサイズで販売していましたが、500円以下という価格目標に合わせてサイズを小さくし、より手に取りやすい商品へと改良されました。

刺身醤油と甘露醤油ブレンド

刺身醤油は、どろっとした濃厚タイプから比較的あっさりしたタイプまで、複数の種類をラインアップしています。コロナ禍で在宅需要が増えたことが商品開発を後押しし、バリエーションが広がりました。また、甘露醤油と濃口醤油をブレンドした商品も人気です。洋風なラベルデザインが特徴的で、色が濃くコクのある味わいは、冬場のおでんシーズンに特に好調とのこと。海が近い地域では、新鮮な魚を食べ慣れているため、醤油が甘めです。(※鮮度が良い白身魚は「味」の点ではかなり淡泊で、どちらかというと、コリコリとした歯ごたえを楽しむ傾向にあります)ただ山口の甘露醤油や鹿児島辺りまで行くと、本当に甘くてびっくりすることもあるのですが、濱口醤油の甘露醤油は瀬戸内、広島県民に好まれる甘さと言えます。

消費者の変化に寄り添う──小容量化とペットボトルへの転換

醤油業界では今、消費のスタイルが大きく変わりつつあります。濱口醤油もその変化に柔軟に対応してきました。

「使い切り」の時代

単身世帯や二人暮らしが増えた現在、大きなボトルの醤油は「使い切れない」と敬遠される傾向にあります。100円ショップでも小容量の調味料が並ぶ時代です。かつてスーパーの刺身パックに小袋の醤油が付いていたのを覚えている方も多いでしょう。しかし最近ではその小袋すら省略されるようになり、消費者自身が小容量の醤油を求めるケースが増えています。

瓶からペットボトルへ

かつて醤油といえば1リットルのガラス瓶が主流でしたが、今では500mlでも「多い」と感じる方がいるほどです。中には「醤油はやっぱり瓶がいい」というこだわりを持つ方もいますが、高齢になると瓶が重い・・・という声も。利便性の観点からペットボトルを受け入れる声が増えてきました。プロの板前さんでさえ、ゴミ処理のしやすさからペットボトルを希望するケースがあるそうです。大手メーカーも酢やポン酢でガラス瓶からペットボトルへの移行を進めており、業界全体がこの流れの中にあります。

ただ・・・私は瓶の方が好き!なんだか、瓶の方が美味しい気がするのです。そこで濱口社長に質問してみたところ、やはり「瓶の方が風味を落とさず、長く品質を保ってくれる」というお答え。ペットボトルは、瓶に比べて気密性がないため、劣化が早いのだそうです。瓶容器の方が賞味期限が半年長い、ということにも気づきました。やっぱり!瓶が良いんだぁ!ちなみに、我が家では開封した醤油は冷蔵庫で保存しています。

私たちにもできること

濱口醤油は、かつて業務用の売上が全体の7割を占めていましたが、現在は4割程度まで低下しています。市内の飲食店約200件との取引を維持しながらも、家庭向け商品の開発と販路拡大に力を入れています。サービスエリアや道の駅での販売にも力を入れています。自社でシール貼りや飾り付けを手がけた醤油さし(容器のみ・醤油は別売り)は隠れた人気商品です。お土産として手に取る方が多く、こうした小さな工夫が蔵の存在感を広げています。

作り手は努力している・・・では、私たちはどうでしょうか。

醤油は料理をするときには、欠かせない基本の調味料のはず。でも専用の味付き醤油(卵かけごはん用とか豆腐用とかお餅用とか・・・)に目を奪われて、一瞬興味が湧いて買ってはみたものの、最後まで使い切れずに捨ててしまったことはないでしょうか?確かに、刺身醤油やポン酢はあると便利ですが、卵や豆腐なら普通に醤油のかけて~~と思ってしまいます(^-^;

加工醤油がダメと言うのではなく、普通の醤油をもっと普通に使おうよ!と、私は言いたい。

醤油は味をつける調味料だと思われていますが、実は「香りづけ」という役割もあります。煮込むときに入れる醤油とは別で、最後に「香りづけ」に醤油を加えて仕上げるという調理法がありますよ。

濱口醤油
1970年代まで使われていたレンガ造りの麹室。歴史を感じます。

変わり続けることで、変わらない味を守る

濱口醤油は、地域内外のさまざまな人や活動とつながりを持っています。そういえば・・・広島市内でも人気の「スーパーたかもり」には、江田島市内に負けないくらい、濱口醤油の商品がずらり、並んでいました。

余談ですが、アイドルグループSTU48との関わりもあります。元メンバーの矢野ほのかさんは江田島市の出身で、濱口醤油のプロジェクトを応援。イベントでファンへのプレゼントに商品を採用していただいたのだそうです。

小容量パッケージへの対応、ペットボトルの採用、柑橘系ドレッシングの新商品開発、そして販売チャネルの見直し。濱口醤油は、消費者の変化を敏感にキャッチしながら、絶えず自らを更新し続けています。

約50年の歴史の中で培われた製麹の技術、ステンレス容器による衛生管理、多品種少量生産の工程設計──そして、濱口社長の経験則から生まれるアイデア、こうして変化に耐えうる柔軟さが生まれているのでしょう。

広島でわずか5〜6社しかない醤油専業メーカー。その一つである濱口醤油が、江田島の地で醤油を作り続けている。その事実そのものが、地域の食文化にとってかけがえのない財産です。

濱口醤油

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