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「比婆牛&ジビエ」庄原ガストロノミーツアー

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こんにちは。平山友美です。

昔懐かしい里山風景と豊かな自然が残る、広島県北東部の庄原市。その肥沃な大地と寒暖差のある気候から生まれる多彩な農産物や、自然と人との関りから育まれた畜産が盛んな地として有名です。

その美食の宝庫・庄原市にて、2024年3月11日に開催された「比婆牛&ジビエ」のガストロミーモニターツアーに参加してきました。

今回は、和牛のルーツや地元のジビエ文化に触れ、築250年の歴史的建造物「せとうち古民家ステイズ Hiroshima・長者屋」を舞台に、旬が織りなす美味を巡る、庄原市の自然・文化・食を丸ごと体験したツアーの様子をレポートします。

Check !!
  • 広島県庄原市のガストロノミーツアーに参加してみたい
  • 和牛のルーツとされる「比婆牛」に興味がある
  • 庄原市の文化や食、歴史に触れてみたい

という方にピッタリな内容です。

フードプロデューサーの仕事として、ガストロノミーツアーのモニター体験をしたときの様子を
動画にしてみました。ぜひご覧ください。ガストロノミーツアーの様子はこちら

目次

比婆牛の歴史を学べる比和自然科学博物館

最初に訪れたのは、庄原市立比和自然科学博物館です。中国山地の自然や地理、歴史的背景を情報発信する同館では、里山の文化や暮らしがわかるさまざまな資料が展示されています。日本一小さい博物館としても知られていますが、中はしっかりと見ごたえあり!

案内していただいたのは、館長を務める進藤眞基さん。今回は比婆牛にフォーカスし、庄原の地と人が育んできた比婆牛の歴史について、深いレクチャーをいただきました。

今でこそ「肉用牛」といわれている和牛ですが、たたら製鉄や農耕が盛んだった庄原市(旧比婆郡)では、ほんの数十年前まで「役牛(えきぎゅう)」とよばれ、農作業や運搬の仕事をしてきました。斜面の多い地理的条件から、馬よりも牛が重宝されていたそうです。牛のもっている価値は、今とは比べものにならないほど高かったともいいます。つまり、牛は家族の一員。各家庭で大切に扱われていたそうです。

その後、江戸時代の畜産家・岩倉六右衛門が優秀な牛の改良に着手。長い年月をかけ、比婆牛が確固たる存在となるまでを説明してくださいました。加えて、砂鉄と木炭を用いる、たたら製鉄の技法まで詳しく解説してくださった進藤館長。丁寧でわかりやすい説明から、比婆牛の謎が紐解かれていきました。

貴重な資料が並ぶ中でも特に驚いたのは、館内に展示してある「馬頭観音」です。旧比婆郡では、牛のお墓とされる墓石がいくつも見つかっているとか。牛の供養に墓石を立てるなど現代では信じられませんが、戦前期では、庄原の牛が「家族」の一員とされていた証拠のひとつなのです。

築250年の歴史的価値あるハイクラス宿泊施設「長者屋」へ

庄原市と比婆牛の歴史や文化を学んだ後に向かったのは、一棟貸しの宿「せとうち古民家ステイズ Hiroshima・長者屋」です。

こちらは、庄原市比和町三河内(みつがいち)の里山風景を望む、築250年の入母屋造り農家を、時代の重厚さそのままにリノベーションしたハイクラスな宿泊施設。老朽化により解体の話が出ていたところ、地域の人々の支えにより、2019年、立派な宿泊施設として生まれ変わりました。

宿の一番の特徴は、室内に牛小屋が残ること。比和自然科学博物館進藤館長のお話のとおり、牛と共に生活してきた歴史がしっかりと刻まれています。旧牛小屋には、昔の生活を物語る写真が展示。庄原地方の、人と牛との暮らしを今に伝えているのです。

たたら製鉄により作られた「三河内棚田テラス」の景色を堪能

「長者屋」にチェックイン後、宿に備えてある電動アシスト機能付きのおしゃれなEバイクに乗って向かったのは、「三河内棚田テラス」です。

急勾配もらくらく走れるEバイクの乗り心地は、快適そのもの!風をきりながら里山を走る爽快感に包まれます。

「三河内棚田テラス」には、ウッドデッキがつくられ、ゆっくりと景色を堪能できるよう5脚のチェアが設置されています。目の前に広がるのは、美しい里山の風景です。初夏には、青々とした稲が逞しく育つ様子、稲穂が黄色に色づく季節には、黄金色の景色が広がり、景観そのものがアートとなります。

実はこの三河内一帯で行われていたのが「たたら製鉄」。棚田には、砂鉄を掘った跡「鉄穴残丘(かんなざんきゅう)」が残っています。田んぼの合間にところどころ残る小山が「鉄穴残丘(かんなざんきゅう)」。これは、製鉄過程の鉄穴流しで削らずに残された跡なのだとか。

地元ガイドさんによる説明で、ただ美しいだけじゃない、たたら製鉄という産業で暮らしてきた先人の記憶が刻み込まれた風景を満喫。お話は、ゆっくりとコーヒーを飲みながら。目を閉じると、その当時の光景や声までもが頭の中に浮かんでくるようでした。

イノシシの箱罠見学で庄原のジビエを知る

棚田を後にして、お次はイノシシの箱罠見学に向かいました。全国規模で問題になっている野生鳥獣の被害。庄原市も例外ではなく、イノシシやシカなどによる農林作物への被害が深刻化しています。狩猟による捕獲は、有害鳥獣の数の調整として必要な方法ですが、さらに捕獲した鳥獣をありがたくいただくことで有効活用しようと、同市では、有害鳥獣処理施設を完備。仕留めた鳥獣を調理し、ジビエ料理として地域おこしなどに役立てています。

今回は、箱罠を見るだけの予定でしたが、なんと罠には1頭のイノシシが!滅多に見ることのできない狩猟と捕獲を目の前にすることできました。

かなり大きくみえますが、このサイズでも中型のイノシシとのこと。狩猟シーンの写真掲載は避けますが、初めて仕留め瞬間を見たものにとっては、かなりの衝撃がありました。空気銃でイノシシのこめかみあたりを打つこと一発。そしてすぐに、血抜きに入ります。捕獲後、素早く丁寧に血抜きをすれば、食べにくさのないお肉になるのだそうです。その後、イノシシは冷却機能のついた搬送車で、迅速に処理施設へと運ばれていきました。

見事な狩猟の腕を見せてくれたのは、比和エリアの猟友会会長・富田さんです。富田さんは、ハンター歴約25年の大ベテラン。2023年度だけで、1人で50匹を仕留めたといいます。

「できるだけ苦しめずに仕留めること。そうすれば、鳥獣ににストレスもかからず、肉へのダメージもありません」と富田会長。今回、奇遇にも目前にした狩猟。ただの狩りではなく、地域経済の発展や環境保全に繋がる、人と自然が共存するための営みだと感じました。

腕利きシェフによる比婆牛とジビエのコース料理をBBQスタイルで

比婆牛、そしてジビエについて深い学びを得た後は、「長者屋」へ戻ります。本ツアーの最大目的である、比婆牛&ジビエのバーベキューコースの始まりです。

料理を担当するのは、三河功治さん。日本一予約がとれないとされる滋賀県のオーベルジュ「徳山鮓」をはじめ、数々の名店で修業を積んだ一流の料理人です。庄原市出身の三河さんは、狩猟資格を持つジビエハンターでもあり、地元食材、そしてそのストーリーを知り尽くした出張料理人として「長者屋」へ出向いています。

里山の景観を背景に、炭火で焼かれるジビエ肉。イノシシ肉だけでなく、今回はシカ肉もメニューにラインナップしていました。もちろん、どちらも庄原市で捕獲し処理されたもの。ワイルドなイメージがあるジビエ料理は、アウトドアバーベキューにぴったりです。古民家の縁側から漂う香りが、食欲をかきたててくれます。

炭火で調理したジビエ肉など、庄原食材満載のコースは全10品で構成されていました。全てを紹介したいところですが、実際に同プランを堪能される方のお楽しみに…ということで、中でも印象的だった数皿をご紹介しましょう。

庄原市総領町特産こんにゃくのアヒージョ

お肉だけでなく、庄原の地場食材をふんだんに使うのも同コースの自慢です。

庄原市の総領こんにゃくは、日本の在来種「和玉」という芋を使い、100年以上受け継がれてきた昔ながらの製法でつくられています。味が染み込みやすく、しっかりとした歯ごたえで人気の特産品です。

このこんにゃくを、芽キャベツと原木シイタケとともにアヒージョで。魚介のイメージが強いアヒージョですが、こんにゃくと野菜の旨みがたっぷり!滋味深くもあっさりとした味が印象的でした。

イノシシのバラ肉とビーツのポタージュ

ピンク色が鮮やかなスープは、ビーツのポタージュスープ。色みがキュートなだけでなく、素材や調理法にもしっかりこだわってつくられた一皿です。

雪室で熟成したジャガイモとシャキシャキ食感のスイスリチャード、イノシシのバラ肉が同スープの具材です。さらに、庄原市のチーズ工房「乳ぃーずの物語」でつくられたカチョカバロタイプのチーズがトッピングされています。スープにはイノシシ肉の脂身が絞られており、コク深い味わい。見た目に春を感じる、心優しくなるスープでした。

比婆牛のロースステーキ

待ちに待った比婆牛の登場です!ロースをステーキにして一口サイズにカット。お塩、または庄原市「白根りんご農園」のフルーティーな焼肉のタレでいただきます。

脂が比較的多いとされるロース肉も、比婆牛であればあっさり。そのまま食べても、良質なりんごの酸味が効いたタレをかけても、これぞ至高の肉とされる味わいです。比婆牛の特徴である、とろけるようなくちどけをしっかりと堪能しました。

鹿肉と比婆牛の盛合わせ

ジビエ肉と比婆牛が1枚のお皿の上に並ぶとは、なんたる贅沢でしょう。向かって右側が、シカ肉のザブトン。1頭からわずかしかとれない希少部位です。左側は、比婆牛のトモサンカク。こちらも、牛モモ肉の中でもバラに近い位置にある、三角形の形をしている希少部位です。

シカ肉は、噛めば噛むほど口の中に旨みが広がるしっかりとした食感。比婆牛は、サシがしっかりと入り、まるでバターのような口どけの良さ。牛とジビエの食べ比べができるのも、同コースが持つ一番の特徴です。

部位の特徴やアプローチ法など、三河さんが持つ世界観を間近にできるのも醍醐味です。とてもお話上手な三河さん。食材や調理方法の質問を投げかけると、興味深いお話が続々と!

その他、イノシシのもも肉ハムサラダ、三河さんのお父さまが丹精込めてつくられた米「あきさかり」のおにぎりなど、この土地や空間ならではの料理を存分に満喫することができました。

ドリンクもオール庄原産!お酒と美食のペアリング

おいしい料理には、ドリンクとのペアリングも楽しみたいものです。コース料理と共にいただけるのは、オール庄原メイドのドリンク。

地酒、シードル、クラフトビール、炭酸りんご、りんごジュースなど、アルコールからソフトドリンクまで、ずらりと地元産が揃っています。

庄原で採れた食材を、庄原で食べる「地産地消」の考え方のもとに調理したお料理には、もちろん庄原のドリンクを合わせるのがペアリングのセオリーです。

その土地でしか手に入らない造り手のこだわりと、庄原に息づく歴史文化を感じる食体験をしながら、みんなで乾杯!貴重な建造物の特別な空間で、極上のひとときを過ごすことができました。

最後に

ジビエと聞くとなんとなくクセのあるものを想像されがちですが、丁寧に下処理された庄原のジビエは、一切臭みがありません。そして三河さんが、猟場の環境、そこで育った食材の個性を熟知しているからこそできる逸品が、メニューに並んでいました。もちろん、幻の和牛とも呼ばれる比婆牛を存分に味わえる贅沢も叶います。

庄原市という土地だけでなく、周辺の文化まできちんと理解できた今回のガストロノミーツアー。里山保全に尽力する地域の皆さんとの触れ合い、そして無駄なく尊い命を頂くことの大切さ、都会の喧噪を忘れて静かな場所でいただく絶品料理、その全てが愛おしく思える1日となりました。

ぜひ皆さんも、これまでに体験したことのない新しい庄原を、五感で感じ取ってみてくださいね。

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