皆さん、こんにちは。平山友美です。
広島県庄原市の完全予約制の創作料理店「一柿」を知っていますか? 滋賀の名店「徳山鮓(とくやますし」などで腕を磨いた店主の三河功治さんが、地元・庄原市にUターンしオープンしたお店です。2024年春に「フードビジネス実践講座」を実施した最終日の夜、打ち上げと称して訪れたのが「一柿」。完全予約制かつ広島市内から2時間かかる秘境ともいえる土地の「一柿」の料理は、まさに幻。新進気鋭のシェフが放つ、ここでしか食べられないコース料理の内容やお店の雰囲気などをお伝えします。
- 広島県庄原市の「一柿」に行ってみたい
- 庄原のジビエや比婆牛を使った料理を食べてみたい
- 三河功治さんの料理を食べてみたい
という方にぴったりな内容です。ぜひご覧ください。
一柿とは?
「一柿」の料理に出合えるのは、庄原市口和町。山深い奥地にポツンと立っており、なんて不便な場所に!と思う一方で、包み込むような自然の気配は、まるで異世界のよう。風に揺れる白い暖簾が目を惹きます。
立派な造りの建物は、築100年以上経つ三河さんのおじいさんの家。こちらを改修して、2023年にオープンしたのが「一柿」なのです。
下記、三河さんのインタビュー記事で、ぜひバックグラウンドを知ってから下に続く記事をお楽しみくださいね。
一柿のコース料理を徹底紹介
料理はコースのみで、季節の旬にあわせた構成が成されています。訪れたのは6月。広島でも有数の食材王国・庄原市で、他にはなかなか出回らない食材を使い、この環境でしか作ることのできない最上の状態の料理を日々生み出しています。メインとなるのは、庄原市のジビエ。献立のふり幅の広さを実感するコース料理の内容をお伝えします。
イノシシの干し肉ラーロウ風
一品目は、店名にちなんだ柿の器で登場。イノシシの干し肉は、中国料理の干し肉料理をイメージしたとか。干し肉と干し柿の相性がこんなに良いとは! 古代アステカなどで主食として栽培されていたアラマンサスがあしらわれていました。
八寸
朱色の盆の上に美しく散りばめられたお料理たちに歓声が上がります。比婆牛のローストビーフ、辛み大根と春キャベツに梅干し添え。ヒバゴンネギとイノシシ(トモサンカク)の鉄砲和え、あざみの茎と揚げをたいたもの、イノシシの赤身を食べて育ったすっぽんの茶碗蒸し、イノシシのテリーヌ、そら豆とスナップエンドウなど。
イノシシのレバーペースト
キュートなイノシシ最中の中に入っているのは、なんとイノシシのレバーペースト! 食べるのがもったいないほどキュートです。最中のサクサク感と、全く臭みの無いイノシシレバーが口の中で調和します。
ワニのお刺身とゴギのジュレかけ
広島県北部はサメのお刺身を、ワニの刺身と呼びます。海から遠い山間部でも鮫はアンモニアを持つことで腐敗をせず、よく食べられていました。サメのお刺身は、広島県北の食文化です。醤油と生姜で食べるのが一般的ですが、山椒レモンをかけていただきます。奥のお皿には、幻の渓流魚と呼ばれるイワナの亜種・ゴギ。庄原市東城町の「後藤酢醸造元」の酢でつくられた爽やかなジュレがけです。
イノシシのスペアリブ
ボリューミーなお肉はもちろんイノシシ。こちらは、オーブンで低温火入れした背中のお肉。がぶりとかぶりつくと、肉汁がジュワッ!
イノシシロース
ピンク色のロースは脂身と赤身のバランスが良く、シンプルな味付けで旨みを味わうのがベター。満月の日に潮を汲んで焚いた出雲の藻塩「たましお」でいただきました。調味料ひとつひとつに、きちんとローカルな意味を持つものを使うのが三河さん流です。
ヤマメの素揚げ
なかなか手に入らない天然物のヤマメは素揚げで。淡いピンクが愛らしい広島の藻塩「淡雪塩」がお皿をかわいく彩ります。
イノシシの肉じゃが
私たちが普段食べる肉じゃがの概念を壊す、一柿の肉じゃががこちら。イノシシの肩ロースに新じゃがいものピューレがのっています。嘘だと思って食べてみると、味は本当に肉じゃがです。しかも最上級の。これまで食べたことも見たこともない肉じゃがに驚かされます。
鹿肉(ザブトンとロース)
イノシシだけではなく、シカが登場するのも三河さんの料理ならでは。上が肩の付近にあるザブトン、下がロースです。牛肉でも同じですが、鹿肉も部位ごとで食感が全く違うことがわかります。このように、鹿肉2種類が同時に食べられるのは非常に稀です。これも庄原だからできること。香川県三豊市で新月の日に汲み取った海水で作った塩「新月の塩」でいただきました。塩も、ここまででなんと3種類…!
比婆牛
ジビエの後には、比婆牛が登場。低温で火入れし、表面だけさっと火を当てたシンプルな調理法。今回のお塩は広島県呉市の藻塩です。融点の高い比婆牛は、口の中でさっととろける舌触りが魅力。幸福感でいっぱいになりました。
スッポンのお汁とちりめん山椒ご飯
アキサカリという品種のお米の上にハラリと舞うのは、ちりめん山椒。山椒は、食事をした当日、三河さんの奥さんが近くの山から採取してきたものだとか。スッポンスープの中には、スッポンのエンペラーと脂身の多いイノシシを薄切りにしたしゃぶしゃぶ仕立てのお肉が入っています。パワーみなぎるスープです。
デザート
甘いものは別腹です。最後のデザートは、道の駅「たかの」の雪室で熟成させたりんごのコンポート、庄原のチーズ工房「乳ぃーずの物語。」のリコッタ、フキの砂糖漬け、ウワミズザクラの新芽を塩漬けした杏仁豆腐風。しみじみとおいしい、里山の恵みが詰まったスイーツでした。
庄原の叡智が集結する食の場
三河さんの料理に共通して言えるのは、地産地消の物語に耳を向けられ、土地と繋がりのある文化と対峙ができることです。お部屋にはもちろんテレビはありません。インテリアはおしゃれだけれど、三河さんのおじいさんが残したものそのままが置いてあり、とてもシンプル。あるものといえば、刻々とふけていく美味な時間と静寂です。庄原で育まれた恵みに敬意を払い、三河さんが思いを込めた味わいに心震わせる。感性が研ぎ澄まされていく「一柿」での美食時間でした。
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