フードプロデューサー平山友美です。
普段は地元企業や行政の方と一緒にご当地グルメをプロデュースしたり、テレビ、新聞、情報誌で地元の食材や郷土料理を紹介したり・・・という仕事をしています。
そんなお仕事の中で、毎年、食育活動をプロデュースしています。
それが青少年育成広島県民会議の活動、「いただきます!ぶちうま継承プロジェクト」です。
青少年育成広島県民会議の青少年育成事業の一環で、子供たちに広島県内に伝わる郷土料理、郷土の味に関心をもってもらい、絶やすことなく食べ継ぎ、生きる力を伸ばすとともに、地域の文化を継承していこうというプロジェクトです。
平成3年度から5年計画で、毎年活動してきましたが、あまりに好評につき♡
もう5年、継続することになりました(*´▽`*)
◆過去の記事もぜひお読みください。

2024年度は、広島県東部、福山市の内海町で開催しました。

2024年10月、「いただきます!ぶちうま継承プロジェクト『とれぴち魚』を美味しく食べよう!~瀬戸内の食文化 福山に伝わる郷土の味~」を福山市内海町で開催しました。
昨年度までは山の産物や文化に触れてきましたが、今回初めての海の産物。魚、貝、海藻と海にも生き物がいて、私たちは海の生き物の命もいただいている、そんなことも子供たちに実感してもらえる1日になれば良いなぁと願いながら、スタートしました。
とれぴち活魚市場を見学
とれぴち活魚市場は田島漁協青年部が主催する朝市で、毎週土曜日の朝7時から開かれています。(※開催時期は決まっています)ここでは、生きた魚を間近で見ることができました。

現地ナビゲーターを務めてくださったのは、マルコ水産の兼田寿敏さん。まだピチピチの魚を取り上げて、「何という魚でしょう⁉」と子供たちに問いかけると、数名でしたが、すごくお魚に詳しい子供もいて、積極的に答えていました。市場では魚を捌いてもらうこともできます。今回は、鯛を「神経締め」するところまでを見学しました。この締め方は、ちょっと技術が要るので、実は漁師さんでも全員ができるわけではないので
す。魚は、この締め方によっても、味が全く違ってきます。広島県の市場では、「神経締め」が徹底されています。


とれぴち活魚市場をひとしきり見学したら、今度は活魚センターの中に移動。このセンターは、普段は、収獲した魚を一時的に保管するために使われています。
さっそく「おさかなマイスター」の力本夕佳里さんと一緒に、観察します。「触ってみて」と促されて、おそるおそる鯛を触
る子供たち。まだウロコが付いています。背びれ、腹びれ、エラなど、各部位も実際の鯛で確認しました。図鑑で見るのとまったく違うでしょう!
子供たちには順番で「ウロコとり」の体験をしてもらいました。
ウロコを取った後は、捌いていきます。大人でもこんな間近で魚を捌いていく様子を見ることがないので、子供たちの後ろで、大人たちも興味津々でのぞき込んでいました。
鯛のあとは、ハマチです。これも魚を触ってみるところから。すると、鯛とは全く違う触感にびっくりする子供たちもいました。




ハマチは、漁師さんが捌いてくれました。実は、漁師さんは忙しいと聞いていたので、事前にお願いしていたわけではありませんでした。でも子供たちがあまりに楽しそうにしている様子を見て、飛び入り参加してくださったんです。


せっかくだから、目の前で捌いた魚はすぐ食べてみよう!これがさらに楽しい瞬間でした。いつも食べている刺身と比較してはいけませんが、この捌き立ての刺身を食べると、誰もがビックリするはずです。魚は、時間が経つとどんどん味が変わっていきます。
スーパーで買う刺身は、どんなに鮮度が良いと言っても、この捌き立ての味には敵いません。飲食店で「刺身が美味しい」と思う店があったら、それは店内で捌いているのかもしれません。中には、捌いてすぐよりも数時間置いた方が美味しいと言われる魚もあります。食べごろの時間は、魚種によって違います。そこを漁師さんに聞けると、ラッキーですよ!


家族で試食タイム
これまでのように調理室があって、試食する部屋が用意されているわけではないので、運動会のときのように、シートを敷いて、家族単位で座って食べてもらうことにしました。準備する側としては、快適な環境で食べてもらうことができないことを心配していたのですが、和気あいあいとした雰囲気になり、ホッとしました。
「食卓」というテーブルを囲む以上に近い距離で食事をすることができました。1つ食べ終わったら、また次の料理が出るという風に、順番に出していきました。これも、待ち時間に退屈するかなぁ、と心配していたのですが、そんな心配は不要でした!子供たちは、食べ終わると、捌いた魚の傍に集まってきて、頭を触ったり、中骨やヒレを観察したりして楽しんでいる様子でした。



漁師さんのお話

最後に、漁師さんのお話。兼田さんがスライドを使って、お話をしてくださいました。漁をする以外にも漁師さんの仕事はたくさんあります。内海町は、県内一の海苔の生産地ですから、海苔養殖についてのお話も聞きました。
でもその海苔の育つ環境が変化して、良い海苔が育たなくなっていたり、せっかく育っても食害によって収穫できなくなってしまったりという課題があります。

原因は、海水温の変化によって、南の方にいたはずの魚が北上してきている、それが広島湾の住む魚たちのエサになるはずだったプランクトンや海藻などを食べてしまう、その結果、食べるものがなくなった地場の魚が、これまでは食べることがなかった海苔を食べてしまうという悪循環が起こっているのです。
生活排水やごみなど、海の汚染問題であれば、私たちにもできることがありそうですが、海水温の上昇、食害については、どんなことができるでしょうか。漁師さんから問題提起をされたような気がします。家族でもこうした環境問題について、話す機会が増えていくと良いですね。

この日のとれぴち魚料理
当日、みんなで食したお魚ごはんを紹介します。当日になるまで、どんな魚が揃うかが分からなかったのですが、日本料理の基本の五法(生、焼く、煮る、蒸す、揚げる)に従って調理しました。
まずは、生きた鯛を締めるところから見学して、捌くところを間近でみた鯛、そしてハマチはお刺身に。

ボラは、スーパーに並ぶことがない魚です。どうやって食べたらいいか、分からないときは、煮付けかフライがおすすめです!この日は、チヌとボラの両方を煮付けにしました。

「揚げる」は、ママカリを素揚げにしました。ママカリは、岡山県の郷土料理としても登場します。酢漬けにしたママカリがあまりに美味しくて「ごはん(まんま)を隣の家から借りてでも食べたい」というのが名前の由来と言われています。

鯛のアラは、酒蒸しにしました。食べるところは少ないのですが、酒のうま味とよく合います。大人の方が喜ばれていたかもしれませんね⁉

ごはんは、鯛めしです。これは、郷土料理の1つです。鯛めしを海苔でくるりと巻いて食べると美味しいです。内海町では、鯛めしの他、鯛そうめんにして食べることもあります。

汁物は、この日に登場した魚のアラを使った味噌汁でした。複数の魚のうま味が相乗効果を発揮してくれました。


兼田さんたちが作っている海苔は、もうそのままでも食べたい!という子供たちがたくさん。何度もお代わりに来てくれました。

参加者のみなさんと記念撮影!楽しんでもらえたかな?
2025 年(令和7)年1 月 海苔漁の様子 @マルコ水産
海苔漁の様子

海苔の収穫は、今年度は12月25日頃からようやく始まりました。海苔は、収穫してすぐに洗浄、加工されて板海苔になるので、私たちは生の海藻の状態を見ることができません。そこで、私たちが取材に行ってきました。この時の様子は、動画にまとめました。
〈今回のナビゲーター 兼田寿敏さん〉
人生を豊かに過ごそうと思ったら、豊かな食が必要だと思う。「豊かな食」というのは、高いものを食べるという意味ではなくて、目の前の食材の作り手がどんな風に作ったのか、どうやって作られたものなのか、そうことに思いを馳せることができる感性をもつことが豊かな食に繋がると思う。
その感性を身に付けようと思ったら、色んな食べ物の生産の背景を知ったり、作り手の思いを知ったりすることが大切だと思います。子供たちには、そういうことに、少しでも気を配りながら育っていって欲しいです。



今回お手伝いいただいた皆さんからも感想をいただきました。
〈おさかなマイスター 力本夕佳里さん〉
ウロコやひれ、目玉でも興味津々につつく子供達を見て、うれしい反面、丸ごと一匹の魚を見たり触れたりする機会が本当に少ないことを感じました。だからこそ、当イベントはても有意義だと思いました。
内臓の説明をしたときも、苦手そうに目を背けるお子さんはほんの1~2名で、ほとんどの子供が目を輝かせて、やはり触っていました(笑)
料理になる前の丸魚を見せて簡単な魚種説明をする際、「これはどんな料理になるの?」「早く食べたい!」と、とても関心をもって料理を待ってくれている子供たちの姿が印象に残っています。
本来の魚の姿を、見て、触って、食べることができる当イベントは本当に魅力的だと思います。普段なかなかお会いする機会がない漁師さんとお話しできたことは、私にとっても貴重な時間で楽しませて頂きました。
大変でしたが、楽しかった!子供たちもそうですが、一緒に参加してくださったお父さん、お母さんたち、大人も興味をもって、積極的に参加してもらえたことが嬉しかったです。イ
ベントの後で、ふたたびマルコ水産を訪ねて、漁の見学をされた家族もいたそうです。
私たちは、イベントとしてほんの数時間の体験の場しか提供することができません。でもそのわずかな時間に得たことが、家族で食に向き合うきっかけになってもらえたなら、こうして活動を続けていく元気が湧いてきます。兼田さんの言葉にも共感します。「豊かな食」を通じて、人生を豊かに過ごそう!そのために、目の前の食材の背景に思いを馳せる自分であり続けたいと思います。

〜瀬戸内の「食文化」・福山に伝わる郷土の味〜 「とれぴち魚」を美味しく食べよう! 日 時:令和6年10月12日(土)9:00~13:30 場 所:とれぴち活魚市場(福山市内海町236水産物加工センター前) 【備後...