皆さん、こんにちは!フードプロデューサーの平山友美です。
今回、食のプロフェッショナルとして紹介するのは、料理家としてさまざまなメディアにレシピを提供し、料理の楽しさや素晴らしさを伝えながら、作家としても一線でご活躍されている樋口直哉さん。
料理と小説は一見すると関係が無いように思えますが「食」、「食べ物」というキーワードを通すと、ご自身の思いとも相まって、とても興味深い共通項が見えてきました。
二つの顔を持つ異色の作家、料理家の樋口さんに、それぞれの魅力や食べ物を通してみた世界観を伺いました。動画とテキストでのインタビュー形式で、わかりやすくお伝えしたいと思います。
- 樋口直哉さんについて知りたい
- 料理家という職業について知りたい
- 食に関する小説やライティングに興味がある
という方にピッタリな内容です。
ぜひご覧ください。
樋口直哉さんインタビュー動画
樋口さんのインタビュー動画です。現在のお仕事内容や、食の仕事への情熱を語っていただきました。
ぜひ、テキスト記事と合わせてご覧ください。
インタビュー出演者(登場人物)
友美:平山友美(ひらやまともみ)
フードプロデューサー。(※フードプロデューサーは「自分の住む町の事業者さんと共に食にまつわる「コトづくり」をする専門職です。)主に新商品の企画開発や販促物の制作、地域ブランドづくりに携わっています。商品の魅力を言葉にしたり、魅力的に見えるような演出を考えるのが得意です。
会社のホームページはこちら。インスタグラムはこちら。
樋口:樋口直哉(ひぐちなおや)
服部栄養専門学校卒業後、料理教室勤務や出張料理人などを経て、2005年『さよならアメリカ』で群像新人文学賞を受賞し、デビュー。同作は芥川賞候補になる。作家として作品を発表する一方、全国の食品メーカー、生産現場の取材記事を執筆。料理家としても活動し、地域食材を活用したメニュー開発なども手がける。主な著書として小説『大人ドロップ』(2014年映画化)『スープの国のお姫様』、ノンフィクション『おいしいものには理由がある』、料理本『新しい料理の教科書』『ぼくのおいしいは3で作る』などがある。
樋口さんのnoteはこちらから。 インスタグラムはこちらから。
インタビュー(対談形式)
作家・料理家として活躍される、樋口さんとのインタビュー内容を記事にしてみました。
料理人としてのルーツは、少年時代にあり
多岐に渡ってご活躍されている樋口さんが、料理へ興味を持ったきっかけを教えてください。
中学生の時、日本の料理人が、フランスに渡って料理をするドキュメンタリー番組を見たことがきっかけです。それを見て、すごくかっこいいなと思いました。料理人という仕事が、ただ料理を作っているだけではなく、料理を通して自らを表現しているところに、衝撃を受けました。その番組に出てきた料理を自分でも作ってみたいと思い、材料をスーパーで買ってきて作ったのが、僕にとっての原体験です。
まずはそこが、食や料理の世界への入り口だったんですね。
当時、家に父親の蔵書があり、そこには料理に関する本がたくさんありました。なかでも辻調グループの創設者である辻静雄先生の本は夢中になって読んでいましたね。
お父様も、料理や文学に対して、とても情熱を注いでいらしたんですね。
父は、とても本が好きな人だったので、阿川弘之や開高健をはじめとする作家たちの本をよく読んでいましたね。辻静雄先生もそうした作家たちと交友がありました。今のように誰もが海外に行けない時代、作家たちはヨーロッパの文化を日本に輸入するという役割も担っていたんですね。
そういったことが、後にフランス料理の道へと進まれるきっかけにもなったのですね。
小説家としてのもう一つの顔。そこにも「食」というキーワードが
本当に料理がお好きなことが伝わるエピソードです。ではもう一つのお仕事である、小説を書かれるようになったきっかけは?料理人と小説って、あまり相容れない感じもします。
たしかにそうかもしれませんね。僕は23歳の時に、小さなお店を営んでいたのですが、夜の来客が少なかったんです。時間を持て余していた時、小説のアイデアが一つ浮かんできて……。それで小説を書いてみようと思いました。
樋口さんの処女作『さよならアメリカ』は、2005年の第48回群像新人文学賞に輝き、作家としてデビューされました。さらにその作品は、芥川賞候補作品にもなりました。小説を書くことは、そんなに簡単なことではないですよね。
僕にとっての小説は、書こうと意気込んで書くものではありません。書くしかないから書く。小説のアイデアはある、お店が暇だから時間もある。だから、当時は小説を書くしかなかった、ということだと思います。
それまで、物を書くということを専門的に勉強された経験はなかったんですよね。
そうです。だからすごく苦労しました。デビューすると編集者さんからのダメ出しがすごいので(笑)。でもそのおかげで、小説家として成長することができたと思います。
小説家としてデビューし、改めて気づいたことはどんなことでしょうか?
インプットとアウトプットのバランスの大切さです。小説を書き始めて3〜5年ほど経った頃、書くことが辛くなった時期がありました。その時、ちょうど外に出て取材をする機会をいただいたんです。取材先で、たくさんの情報をインプットをし、書いてアウトプットをする。それを繰り返すと、文章がすごく書きやすくなりました。取材を通じてノンフィクション的な文体も書けるようになったので、やはり二つのバランスをしっかりと取ることが、僕にとっては重要ですね。
相異なる二つの仕事を、食や食べ物というモチーフが繋げる
そんな樋口さんにとって、料理と小説という一見全く共通点のないと思われるような2つについて、似ていると感じる点はありますか?
料理も小説もまずモチーフがあって、そこから物語がはじまることでしょうか。料理でしたら、たくさんの食材を調理という手段で完成させていく。小説なら、例えば自分の体験や自分以外の人から聞いた話などの要素がモチーフとなり、それらが重なって物語を構築していく。どちらも、自分の中に一度インプットしてから、料理や小説という形でアウトプットするという点はとても似ていると思っています。
どちらも第一線で活躍されている樋口さんならではのお答えですね。それでは、料理と小説それぞれの良い点を教えてください。
料理の良い点は、作り始めると結果がすぐに出るところですね。小説は始めてから書き終わるまで、僕は少なくとも2〜3年はかかってしまうので、結果が出るまでがもどかしい(笑)
ではすぐに結果が出せる料理、じっくりと熟成させて成果を出す小説。それぞれに魅力があるということですね。
そうです。どちらも大変ではありますが、どちらも楽しい。でも楽しいことって、大体は面倒なことですよね。料理にしろ小説にしろ、山登りにしたって大変だけど、登ることが好きだから止められないのと一緒ですね。
山に登りきった後の景色を見るために、大変だけど楽しいから頑張るということですね。料理と小説、それぞれ大切にされていることを教えてください。
親切であることです。僕はなるべく分かりやすく、親切な文章を書くことを心がけています。これは料理も同じ。料理の構成がシンプルで、わかりやすい料理が好きですね。
では最後になりましたが、作家と料理家、二つの顔を持つ樋口さんからメッセージをお願いします。
僕は、食べ物は本当に素晴らしいものだと思っていて、料理も小説も基本的に食べ物をモチーフにしています。食べ物は、人と人とを繋ぐもの。同じ釜の飯を食べる、という言葉があるように一緒に食べるだけで仲良くなれる。色々な価値観があるなかで食べ物を大事にするのはとてもいいことだと思います。「食べ物を通して今より少しでも世界を幸せにできたらいいな」と思いながら僕はいろんな仕事をしています。そのための手段が僕の場合、料理であり小説なのです。食べ物は無限に人と人とを繋げてくれる気がして、なんだかとても面白いんですよね。
最後に
柔らかな雰囲気を纏う樋口さん。でもそのお話からは、「食」に対しての情熱と強い思いを感じることのできる、充実したインタビューでした。
料理家として、私たちの食卓をより一層華やかに彩ってくれるさまざまなレシピ。作家として、現実から少し離れ物語の世界に誘ってくれる小説。そこにも、樋口さんの「食」に関する思いが溢れています。
ぜひ皆さんも、樋口さんが生み出す魅力的なレシピと、小説の世界に浸ってみてください。きっとこれまでとは違った視点で、食を見つめることができるはずです。
弊社では新商品の企画開発や販促物の制作、ブランド作りに携わっています。お気軽にお問い合わせください。