庄原の山奥「よもぎCAFE」で考えた、料理人が本当に見ているものはレシピじゃない

20260414
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店名のイメージを覆す、圧倒的な「ここでしか味わえない」体験

ずっと再訪したかった庄原市口和町の「よもぎCAFE」に、ようやく行くことができました。

「よもぎカフェ」という店名を聞くと、おそらく多くの方が、よもぎや山菜を使った素朴な和食が出てくるような、のどかなイメージを思い浮かべるのではないでしょうか。私も最初はそうでした。

ところが、実際に訪れると、そのイメージは心地よく裏切られます。

食材の質、その調理法、提供の仕方。すべてがトータルで「ここでしか味わえない」というオーラを放っていて、正直なところ、東京の一流レストランなら5万円以上のコースに匹敵するのではないかと感じるほどでした。

豚の放牧飼育から精肉加工まで、すべて自分たちの手で

よもぎCAFEの何がすごいかというと、食材のほとんどを自分たちで育て、採り、作っているという点です。

敷地内の広大な畑で有機野菜を栽培し、鶏を飼って新鮮な卵を確保し、山に入れば山菜やきのこを採る。さらには山水を利用したニジマスの養殖まで手がけています。

そして特に驚くのが、豚の放牧飼育です。日本ではまだまだ珍しい放牧飼育で、野山を自由に駆け回り、のびのびと育った豚を、精肉加工まで自分たちで手がけているんです。味噌や漬物などの加工品もすべて自家製。ここまで徹底したお店は、なかなかありません。

食材のマニアックで濃い話が好きな方には、間違いなく刺さると思います。

自分の店を持ちたい料理人にこそ、訪れてほしい場所

このお店を営んでいるのは、庄原市出身の姉妹。それぞれ県外で経験を積んだ後、2017年にUターンしてカフェをオープンしました。店内の家具や雑貨のほとんどが手作りで、空間全体に心地よいこだわりが行き届いています。

「ハイレベルなローカリズム」という言葉がぴったりなお店です。

地方で自分の店をやりたいと考えている料理人さんには、ぜひ一度訪れてみてほしい。食材の調達から調理、空間づくりまで、すべてを自分たちの手でコントロールする。その覚悟とクオリティの両方が、ここにはあります。

料理人が見ているのは「レシピ」ではなく「食材そのもの」

よもぎCAFEでの食事を通じて、改めて考えたことがあります。

私たちは家庭で料理をするとき、基本的に「レシピ」ありきで考えます。「今日は何を作ろうかな」と思ったとき、最初に見るのはレシピサイトや料理本。完成図をイメージしてから食材を揃える、という流れが一般的です。

でも、私がインタビュー取材で訪ねて行く料理人さんたちは、まったく逆のアプローチをしています。まず食材を見て、その食材が持つ力を感じ取ってから、どう調理するかを考えるんです。

だから、彼らの料理には「名前」がないことがほとんどです。レシピが先にあるのではなく、目の前の食材との対話から料理が生まれる。名前は、お客さんにイメージしてもらいやすいように、後から頑張って考えてくれているもの。レシピも、「教えて」と言われるから、わざわざ言語化してくれているだけなのです。

本当に知るべきはレシピじゃない

SNSやレシピサイトが充実した今、レシピは簡単に手に入るようになりました。でも、レシピだけでは伝わらないものがあります。

なぜこの食材を選んだのか。なぜこの切り方をするのか。なぜこの温度で火を入れるのか。その判断の根っこにあるのは、食材をどれだけ深く理解しているかということ。レシピはその結果を言葉にしたものであって、料理の本質そのものではありません。

よもぎCAFEで出される料理は、まさにその「レシピの手前にあるもの」で成り立っています。畑で育てた野菜を見て、山で採れたきのこを見て、今日の豚の状態を見て、それからどう料理するかを考える。その積み重ねが、「ここでしか食べられない一皿」になっているんです。

本当に知るべきは、レシピじゃない。食材をどう見るか、という眼差しの方なんだと、改めて思った週末でした。


よもぎCAFE 基本情報

店名: よもぎcafe(よもぎカフェ)

所在地: 広島県庄原市口和町宮内285

電話番号: 080-4174-7851(予約専用)

営業時間: 11:30〜16:00頃

定休日: 不定休

メニュー: 季節のおまかせコース(要予約)

特徴: 自家栽培の有機野菜、放牧飼育の豚、自家製加工品(味噌・漬物など)、養鶏、ニジマス養殖。食材のほぼすべてを自分たちで生産

公式サイト: https://yomogi-cafe.jp/

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この記事を書いた人

平山 友美のアバター 平山 友美 ひろしま食の手帖編集部 代表

フードプロデューサー。「情報は自分の足で稼ぐ」をモットーに、地域食品・郷土の味を取材しています。新聞や情報誌、専門誌に10年超えの長期連載を担当。「NHKきょうの料理ビギナーズ」にも寄稿。「TBSテレビ 熱狂マニアさん」などに出演。

その他、広島・岡山・東京を中心に食品企業の事業相談(商品や会社の強みをどう伝えるか、を言語化して、展示会や売場での見せ方を考える仕事や売り方を考える仕事)や「食」を軸にした観光系の仕事(ツアーや体験造成など)をしています。

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