「除去食」ではなく「みんなで食べられるおやつ」を。小麦・卵・乳製品不使用のお菓子工房「はたけのおやつ」の挑戦

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アレルギー対応のおやつは、なぜ”特別なもの”になってしまうのか

食物アレルギーを持つお子さんがいるご家庭では、日々の食事やおやつ選びに気を遣う場面が少なくありません。特に小麦・卵・乳製品は、多くのお菓子に使われている主要な食材。アレルギー対応食は一般的に「除去食」と呼ばれ、普通食とは別に作られるものとして定着しています。

しかし、ここでひとつ素朴な疑問が浮かびます。

そもそも、普通食にアレルゲン食材を入れずに作れば、みんなで同じものを食べられるのではないか?

「除去食」という言葉には、どこか「何かを取り除いた不完全なもの」というニュアンスが含まれています。でも、最初からアレルゲンを使わないレシピで作れば、それは特別な食事ではなく、みんなが一緒に楽しめるおやつになります。

そんな発想のもとでお菓子作りに取り組んでいるのが、小麦・卵・乳製品不使用のお菓子をつくる工房「はたけのおやつ」さんです。今回、そのこだわりと想いをじっくりお聞きしてきました。

米粉と野菜の力で実現する、アレルゲンフリーのおやつ作り

「はたけのおやつ」さんのお菓子は、小麦粉の代わりに米粉を使い、牛乳の代わりに豆乳を使用しています。そして、卵の代わりにはかぼちゃやみかんなどの食材を活用。卵っぽく見える色味を自然素材で再現するという、細やかな工夫が施されています。

お菓子の美しい色合いも、すべて野菜由来です。ビーツの鮮やかな赤、ほうれん草の深い緑など、自然の色が生かされています。着色料に頼らず、野菜そのものの色で彩るという姿勢には、食材への敬意と安全へのこだわりが感じられます。

原料の「野菜パウダー」から自分で作るという徹底ぶり

さらに驚くべきは、その原料づくりへのこだわりです。

「はたけのおやつ」さんでは、提携する農家さんを厳選し、規格外になってしまった野菜を上手に活用しています。見た目の問題で市場に出回らない野菜を丁寧に乾燥させ、粉末に加工するところから手がけているのです。

市販の野菜パウダーを仕入れて使うのではなく、原料となる野菜の粉末から自分たちで作り上げる。しかも、それを商品として販売するところまで実現している。これは、なかなかできることではありません。

規格外野菜の活用は、フードロスの削減にもつながっています。おやつ作りを通じて農家さんとの関係を大切にしながら、食品ロスという社会課題にもアプローチしている。そんな多面的な価値がこの工房にはあります。

友だちの子供のために始めた、心温まる創業ストーリー

アレルギー対応のおやつ作りを始めるきっかけは、往々にして「自分の子供にアレルギーがあるから」という理由が多いのではないでしょうか。実際に、お子さんのアレルギーをきっかけに、自宅でおやつを手作りするお母さんは少なくありません。

しかし、オーナー兼パティシエの内畠さんが工房を始めた理由は、少し違いました。

内畠さんご自身のお子さんにアレルギーはなかったのです。

きっかけは、友だちのお子さん。その子に食物アレルギーがあり、一緒におやつを食べる場面で「食べられなくてごめんね」と謝られた経験が、内畠さんの心に深く刺さりました。

アレルギーを持つ子供が謝らなければならない状況。食べたいのに食べられない悔しさ。そして、そのことを申し訳なく思う親御さんの気持ち。内畠さんは、そうした状況を目の当たりにして「みんなで同じおやつを食べられる世界を作りたい」と決意されたのです。

自分の子供のためではなく、友だちの子供のために。その純粋な想いから生まれた工房だからこそ、「はたけのおやつ」のお菓子には、温かいやさしさが詰まっているのだと感じます。

「普通のお菓子」と味比べをしないでほしい、その理由

ここで、ひとつだけお伝えしておきたいことがあります。

「はたけのおやつ」さんのお菓子を食べるとき、小麦粉や卵を使った一般的なお菓子と味比べをするのは避けていただきたいのです。

少し専門的な話になりますが、製菓製造の理論では、卵はお菓子にふわふわとした食感を与える役割を担っています。また、小麦粉に含まれるグルテンは、生地にしっかりとした骨格を作り出します。これらは、いわばお菓子作りの土台となる要素です。

小麦・卵・乳製品を使わないという選択をした時点で、それらの食材を使ったお菓子とまったく同じ仕上がりにはなりません。これは当然のことです。同じ素材を使っていないのですから、同じ味や食感にならないのは、むしろ自然なことなのです。

知恵と手間を想像しながら味わってほしい

大切なのは、「普通のお菓子と違う」という引き算の視点で評価するのではなく、小麦・卵・乳製品を使わずにここまでおいしいお菓子を作り上げるために、どれだけの知恵と工夫と手間が注がれているかを想像しながら味わうことです。

卵を使わずにふんわりとした食感をどう実現するか。グルテンなしでどうやって生地をまとめるか。色合いをどう表現するか。ひとつひとつの課題に対して、野菜や自然素材の力を借りながら答えを見つけ出してきた、その試行錯誤の積み重ねがあります。

「はたけのおやつ」さんのお菓子は、アレルギーを持つ方だけのものではありません。食の安全や自然素材にこだわりたい方、フードロスに関心がある方、そして「みんなで一緒に食べる喜び」を大切にしたいすべての方に届いてほしいおやつです。

アレルギーがあっても安心して食べられるおやつを探している方へ

お子さんのアレルギーで、安心して食べられるおやつがなかなか見つからないという方。誕生日会やイベントで、みんなと同じおやつを食べさせてあげたいと思っている方。ぜひ一度「はたけのおやつ」さんのお菓子を試してみてください。

「食べられなくてごめんね」ではなく、「一緒に食べよう」と言える。そんな小さな幸せを届けてくれるお菓子工房です。

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この記事を書いた人

平山 友美のアバター 平山 友美 ひろしま食の手帖編集部 代表

フードプロデューサー。「情報は自分の足で稼ぐ」をモットーに、地域食品・郷土の味を取材しています。新聞や情報誌、専門誌に10年超えの長期連載を担当。「NHKきょうの料理ビギナーズ」にも寄稿。「TBSテレビ 熱狂マニアさん」などに出演。

その他、広島・岡山・東京を中心に食品企業の事業相談(商品や会社の強みをどう伝えるか、を言語化して、展示会や売場での見せ方を考える仕事や売り方を考える仕事)や「食」を軸にした観光系の仕事(ツアーや体験造成など)をしています。

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